ESSENTIALS
アイザック・ヘイズのムーヴメント

ISAAC HAYES 『Chocolate Chip』 Hot Buttered Soul/ABC/Ace(1975)

ABC移籍に伴って設立した自身のレーベル=ホット・バタード・ソウルからの第1弾アルバム。陣容はスタックスの頃とほぼ変わらないが、“Theme From Shaft”風の意匠を軽快なビート上で転用した表題曲など、ディスコの流行が本格化していく時代のムードを素直に反映した作りが潔い。JMシルクが後にハウス・ヒットさせる“I Can’t Turn Around”も収録。 *出嶌

 

THE MASQUERADERS 『Everybody Wanna Live On』 Hot Buttered Soul/ABC/Ace(1975)

ダラスの5人組ヴォーカル・グループがホット・バタード・ソウルに入社し、ヘイズの全面援護で吹き込んだ初アルバム。熱血系のバリトンが歌う力強いアップにはフィリー・ソウルの影響も見られるが、スロウ・バラードではヘイズ的な寂寥感が漂う。白眉はアーバン・ミスティック曲で引用された、シレルズ曲のスウィートなカヴァー“Baby It’s You”。 *林

 

ISAAC HAYES MOVEMENT 『Disco Connection』 Hot Buttered Soul/ABC/Ace(1975)

ヘイズのお抱えバンドを主役にしたアルバム。むろん制作はヘイズで、演奏はバーケイズ人脈を中心としたメンフィスの腕利きだが、随所に『Shaft』流儀を織り込みながらラヴ・アンリミテッド・オーケストラやMFSBを意識したと思しきディスコ調インストを聴かせる。ディスコ・ファンクな表題曲やMFドゥームも用いたスロウ“Vykkii”で再評価著しい快作。 *林

 

ISAAC HAYES 『Juicy Fruit (Disco Freak)』 Hot Buttered Soul/ABC/Ace(1976)

猥雑さと洗練のせめぎ合うバランスから見ても結果的に大きな分岐点となったと思える、ABCでの最終ソロ作。レスター・スネルがアレンジを担ったムーヴメントの演奏も円熟味を帯びたファンクネスを響かせ、リラックスして歌と語りを展開するヘイズの振る舞いも大らかでソウルフルだ。“Music To Make Love By”ではマスカレイダーズもコーラスに参加。 *出嶌

 

ISAAC HAYES, DIONNE WARWICK 『Man And A Woman』 Hot Buttered Soul/ABC/SoulMusic.com(1977)

バカラックの曲を歌ったという共通点ゆえの共演か。淑女と野獣による異色の組み合わせで聞かせる本作は、それぞれのソロ・ヒットやメドレーも含めたアトランタでのライヴ実況盤。オージェイズやKC&ザ・サンシャイン・バンドなどの同時代ヒットも取り上げ、サパー・クラブ的な上品さで迫る好演だ。後にヘイズはディオンヌに“Deja Vu”を書き下ろす。 *林

 

ISAAC HAYES 『New Horizon』 Polydor/BBR(1977)

文字通り〈新たな地平〉をめざして環境を一新したポリドール移籍作。冒頭から10分超えの大河ディスコが連発され、それらのダンス・トラックではミックスをトム・モウルトンに委ねて全体にさらなる洗練を持ち込んでいる。一方、ジョニー・アレンをアレンジャーに呼び戻した“Don’t Take Your Love Away”の濃密なアダルト表現は演歌的な狂おしさ! *出嶌

 

ISAAC HAYES 『For The Sake Of Love』 Polydor/BBR(1978)

ポリドールでの2作目。申し合わせたかのようにバリー・ホワイトと同年にビリー・ジョエル“Just The Way You Are”をカヴァーしたり、ジェイムズ・テイラー“Don’t Let Me Be Lonely Tonight”を歌うなど、名曲の独自解釈でムーディーに迫る様は相変わらず。メインはバラードだが、あの映画テーマをディスコ調にセルフ・リメイクした“Shaft II”も話題だ。 *林

 

ISAAC HAYES 『Don’t Let Go』 Polydor/BBR(1979)

ロイ・ハミルトンのロックンロールをディスコ・リメイクした表題曲や、AORっぽい歌唱“What Does It Take”、後にメロウな定番サンプルとなる夜帯のレイドバック名曲“A Few More Kisses To Go”などバランスの取れた内容で、生前最後のTOP10入りも果たしたヒット作。ポリドール期の特徴となるアトランタのホーン隊がここでも小気味良いスパイスを振りまく。 *出嶌 

 

ISAAC HAYES 『And Once Again』 Polydor/BBR(1980)

80年代初のアルバム。フィリー風のバラードに仕立てたトミー・エドワーズのポピュラー定番曲“It’s All In The Game”で幕を開ける本作はサウンドの洗練度がアップ。〈Ike’s Rap〉の第7弾にロバータ・フラックなどでお馴染みの“This Time I’ll Be Sweeter”を繋げて上品に歌い上げるヘイズのメロウ度合いも特筆したい。ディスコ調の快活なアップも上々の出来。 *林

 

ISAAC HAYES 『U-Turn』 Columbia/Expansion(1986)

コロムビア第1弾。前半3曲はレーベル・メイトとなったサーフィスの創作で、彼ら流儀のソリッドなファンクや繊細なスロウをシンガーに徹して歌う。モノローグ曲の第8弾〈Ike’s Rap VIII〉以降は、“Can’t Take My Eyes Off You”など名曲の独自解釈を含む従来のまったり路線。キャロル・キング“Hey Girl”のカヴァーはラモント・ジョンソン版を手本にした? *林

 

VARIOUS ARTISTS 『Shaft』 LaFace/Arista(2000)

 ジョン・シングルトン監督によるリメイク版「シャフト」のサントラ。“Theme From Shaft”の再録にはヘイズが招かれ、レスター・スネルらムーヴメント仲間を従えて原曲そのままに演奏しつつ、“Truck Turner”を混ぜ込む遊び心も見せる。ヘイズは当時の有望新人アリシア・キーズの“Rock Wit U”でもローズを弾き、70年代マナーのストリングス・アレンジも担当。 *出嶌