深まる秋を両腕で抱きしめるリイシュー

 平日が殺人的に忙しくなるだけのムチャな連休を設けるより、リイシューを増やしたほうが消費拡大に繋がるんじゃないでしょうか。そうでもないのか。で、まずは今月の主役アイザック・ヘイズとも絡んだことのある大物ということで……。

WILSON PICKETT 『Mr. Magic Man: The Complete RCA Studio Recordings』 Real Gone(2015)

 ウィルソン・ピケットがRCAに残した73~75年のスタジオ録音を網羅した『Mr. Magic Man: The Complete RCA Studio Recordings』から。アトランティック離脱後の楽曲群ということで、エキサイターとしての資質が時流にマッチした60年代の諸作と比べるのは酷だとして、その折々の洗練を見せていたことがよくわかります。近年ではキース・バーロウ版のほうが有名かもしれない“Mr. Magic Man”を筆頭に、丁寧な歌い口も素敵です。

 

BEN E. KING 『The Complete Atco / Atlantic Singles Vol. 1 1960-1966』 Real Gone(2015)

 一方、アトランティックではピケットの先輩にあたるベンE・キングにも、『The Complete Atco / Atlantic Singles Vol.1 1960-1966』が登場。先日の急逝を受けてコンパイルされたものでしょうが、当時のLP購買層を考慮してアルバムには上品なナンバーを収めていたことも逆にわかるというか、アルバム未収録曲でのリミッターを外した姿に驚かされます。ソウルフル・キング!

 

JOEY GILMORE 『Joey Gilmore』 Blue Candle/Pヴァイン(2015)

 で、話は変わって……ド定番以外の復刻にも期待したいTKの遺産から、ジョーイ・ギルモアが74年に残したマイアミの秘宝『Joey Gilmore』の世界初CD化! サザン・ソウル好きに必須のバラードはもちろん、アイザック・ヘイズの仕事に通じる劇画的なファンクもあって、いろんな角度から楽しめるはずです。

 

THE P-FUNK ALL STARS 『Live At The Beverly Theater In Hollywood』 Westbound/Pヴァイン(2015)

 あと、ファンクなブツでいうならPファンク・オールスターズの2枚組ライヴ盤『Live At The Beverly Theater In Hollywood』も久々に復刻。“Atomic Dog”のヒット後にジョージ・クリントンがメンバーを招集して敢行した83年のツアーからの収録で、軍団の勢いはザップら新興ファンカーに押され気味だった頃ながら、Pの実況録音にしてはタイトで一体感のあるパフォーマンスが楽しめる点でも貴重かもしれません。

 

RAY PARKER JR. 『Woman Out Of Control / Sex And The Single Man』 Soul Music(2015)

 残る2枚は80年代モノ、まずはレイ・パーカーJrがあの“Ghostbusters”(84年)の前年/翌年に発表したアルバムを2 in 1収録の『Woman Out Of Control/Sex And The Single Man』を。まるで再評価されないこの感じこそがリアル80sとも思うわけで、気張った歌唱に『Thriller』以降のエッジーなシンセ・ファンク感覚の映えるノリはいまこそ聴かれるべき?

 

PEGGI BLU 『Blu Blowin’: Expanded Edition』 Capitol/Expansion(2015)

 で、最後はペギー・ブルーの87年作の増補盤『Blu Blowin’: Expanded Edition』をオススメしときましょう。近年はクール・ミリオンの作品で元気な声を聴かせてもいる彼女ですが、ニック・マルティネリらの仕立てたクワイエット・ストームなこの空気は何なのか。バート・ロビンソンとのデュエット“All The Way With You”が都会的で最高!